2019513日発行】

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        人事労務マガジン/5月号
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【今号の内容】

改正労働基準法】等、201941日の法改正が勤怠管理にもたらす影響

 社会保険手続きの変更

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1.【 改正労働基準法】等、201941日の法改正が勤怠管理にもたらす影響とは

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改正労働基準法】【労働安全衛生法】と【労働時間等設定改善法】が201941日法改正されて、2週間経ちましたが、改めて注意点や疑問点を整理したいと思います。

1.年次有給休暇取得日数等の管理等 平成 31 年4月1日から、すべての事業場において、年次有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類 (以下「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、3年間保存しなけ ればならないことになりました。

Q:ここでいう管理簿作成対象者はだれか?

A 条文で明らかなように、有給休暇を取得している労働者が年次有給休暇を 取得したときが対象です。年休が10日以上付与される労働者だけではありません。1日でも付与されている人が1日でも取得すれば、管理簿を作成しなければなりません。労働局や労基署の監督官でも間違えて解釈している方がいますのでは、仕方ないところもありますが、十分注意してください。

 

2.労働安全衛生法改正がもたらす影響

  管理監督者の労働時間の把握が義務化されます
   従業員の労働時間の把握について、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(以下、「ガイドライン」)に「労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用され   る労働者を除くすべての労働者」を対象とすることが示されています。「勤怠管理の適用外」とされていたのは、管理監督者等の責任者や専門型裁量労働制、企画型裁量労働制、事業外労働に関するみなし労働時間制が適用   される従業員となります。
   しかし、今回の法改正で以下の条文が追加されます。

   第六十六条の八の三

   事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

   これにより、ガイドラインでは「勤怠管理の適用外」とされている労働者においても、勤怠管理が義務化されることになります。

    法改正以降は、管理監督者等についても一般従業員と同様に記録しなければいけなくなるのです。
   ここで明記されている「厚生労働省令で定める方法」とは、前述のガイドラインに記載されている方法で、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録」で勤怠管理を行うよう義務づけられてい   ます。

   41日以降は、他の従業員と同様に管理監督者等も同じ方法で労働時間を記録する必要があります。

  つまり、
  
労働時間の把握は管理監督者も対象
   管理監督者でも深夜は割増賃金が発生 、ということです。

   管理監督者等の勤怠管理が義務づけられる大きな理由は、彼らの「健康管理」という点です。これまで労働時間の把握が必要なかった彼らについても、今後は正確に労働時間を把握し、適度な休憩や休日の取得を勧奨するこ  とが求められます。時間外労働の上限規制対象ではなくとも、全ての従業員の「働き過ぎ」に配慮しなければならないということです。

 

 

  管理監督者とは?

  労基法上の管理監督者とは、労働条件の決定やその他の労務管理について経営者と一体的立場に立つ者のことをいいます。
  こうした従業員は、自ら労働時間について裁量権があり、地位に応じた相当の報酬を受けることになるため、労働時間の規制を及ぼすことが不適当と考えられています。
  したがって、管理監督者は法定労働時間や休日労働、割増賃金などの規制の適用を受けません。

   なお、厚労省のガイドラインには、労働時間は「使用者の指導命令下に置かれている時間」と定義づけられています。管理職研修など業務上義務付けられた研修や教育訓練の受講、業務に必要な学習や着替え等の時間につい  ても労働時間としてカウントされますので注意が必要です。

 まとめ

 以上のことから、今後の勤怠管理には、今回の法改正によって以下のことが求められるようになります。

  • 「年休管理簿」を活用しながら有給休暇の取得状況を把握し、消化推奨に努める。
  • 毎月の労働時間に加え一定月間の平均労働時間も管理し、労働時間の上限を超えないよう管理する。また、従業員にタイムリーに指導できる仕組みと連携させる。
  • タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録等「客観的な記録」を用いて勤怠管理を行う。
  • 残業時間の縛りがない管理者や高度プロフェッショナル制度の適用者、みなし労働時間制適用者等も労働時間を管理する。
  • 1ヶ月を超えるフレックスタイム制や変形労働時間制など、多様な労働形態を採用した場合にも、適切な勤怠管理を行う。

 これらの根底には、「正確な労働時間をいかに把握するか」という大きな課題があります。
 今回の改正では「客観的な記録」が求められているため、勤怠の自己申告制はほぼ認められていません。しかも、朝礼や研修など企業の明示や暗黙の指示で従事する時間も「労働時間」としてカウントすることが明確化されてお り、「労働時間は1分単位で管理する」という原則論に基づき適正に把握する環境整備が必要となります。このことだけでも、紙や手作業の打刻に頼っている勤怠管理方法は今後「適切」と見なされなくなることは避けられませ ん。

 *管理監督者とは?

  労基法上の管理監督者とは、労働条件の決定やその他の労務管理について経営者と一体的立場に立つ者のことをいいます。
  こうした従業員は、自ら労働時間について裁量権があり、地位に応じた相当の報酬を受けることになるため、労働時間の規制を及ぼすことが不適当と考えられています。
  したがって、管理監督者は法定労働時間や休日労働、割増賃金などの規制の適用を受けません。

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社会保険手続きが変更

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 41日より社会保険手続きが変更になっています。この適用自体は201991日までは従前通りにすることができるとされていましたが、日本年金機構のホームページで情報の提供が開始されました。

 内容は当然ながら通達にそっており、以下の内容になっています。

遡及した届出等における添付書類の廃止
 資格取得届提出時に、資格取得年月日が、届書の受付年月日から60日以上遡る場合等、届出の事実関係を確認する書類として添付を求めていた「賃金台帳の写し及び出勤簿の写し」(被保険者が法人の役員である場合は、取締役会の議事録等)の確認書類について、今後は、事業所調査実施時に確認を行わせて行うため、届出時の添付を不要とする。

被保険者本人の署名・押印等の省略
 健康保険被扶養者(異動)届等における被保険者本人の署名(または押印)について、事業主が、被保険者本人の届出の意思を確認し、届書の備考欄に、「届出意思確認済み」と記載した場合は、被保険者本人の署名または押印を省略することを可能とする
 また、電子申請及び電子媒体による届出においては、事業主が、被保険者本人の届出の意思を確認し、届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載した場合、委任状を省略することを可能とする。
(注)被保険者本人の署名(または押印)が省略となった場合であっても、届書等の氏名欄の記入は必要。届出の際は、住民票に登録されている氏名を記入した上で提出することとなる。

 なお、届出様式は、201957日に変更後のものに更新されることとなっています。

 

 以上。